登録番号:C01-004 A:用語の意味・基本的な意義
Q. 教科の指導の中で情報活用能力を育成するというのはどういうことでしょうか。
A. 学習活動を、子どもたち自身が調べ・まとめ・発信する活動に切り替えるということです。
情報活用能力は、初等中等教育では、
1)情報活用の実践力
2)情報の科学的な理解
3)情報社会に参画する態度
の3つ能力をバランスよく持つこととされており、特定の教科で育成されるのではなく、様々な教科の学習活動の中で育成されるべきであるとされています。小学校段階では、特に、1)の情報活用の実践力 3)の中の情報モラルの育成が重要でしょう。
情報活用の実践力の育成については、上の図が説明によく使われています。全体としては、与えられた課題(あるいは自分で見つけた課題)に対して、情報を収集し、分析し、編集して発信する(小学校的に言えば、調べて、まとめて、伝える)という活動を繰り返すことによって、情報を吟味したり、わかりやすく表現することを学ぶとともに、ICTやメディアなどの活用の方法も併せて学び、問題解決の方法を身につけることをねらっていることになります。
これからの時代に解決すべき問題は、だれも答えがわからない初めて出会う問題ばかりですので、自分の情報活用の方法や結果に関して、常に自分自身で自己評価し改善できる自己学習の力も必要になります。この図では、情報活用の実践力で身につけるべき力を四角の枠で示していますが、真ん中の「情報活用の自己評価」の能力(メタ認知能力ともいいます)の育成を、最終的な目標に考えていることが示されています。
さて、2012年から進められてきた学習指導要領、また、2020年からの新しい学習指導要領では、各教科の学習活動(児童・生徒が行うべき学習活動)を、あえて情報教育と明示していませんが、自然な形で、教科書に明記されているのが特徴です。特に「情報活用の実践力」を育成する活動として、
体験から感じ取ったことを表現する
例)日常生活や体験的な学習活動の中で感じ取ったことを言葉や歌、絵、身体などを用いて表現する
事実を正確に理解し伝達する
例)身近な動植物の観察や地域の公共施設等の見学の結果を記述・報告する
概念・法則・意図などを解釈し、説明したり活用したりする
例)需要、供給などの概念で価格の変動をとらえて生産活動や消費活動に生かす
例)衣食住や健康・安全に関する知識を活用して自分の生活を管理する
情報を分析・評価し、論述する
例)学習や生活上の課題について、事柄を比較する、分類する、関連付けるなど考えるための技法を活用し、課題を整理する
例)文章や資料を読んだ上で、自分の知識や経験に照らし合わせて、自分なりの考えをまとめて、 A4・1枚といった所与の条件の中で表現する
例)自然事象や社会的事象に関する様々な情報や意見をグラフや図表などから読み取ったり、これらを用いて分かりやすく表現したりする
例)自国や他国の歴史・文化・社会などについて調べ、分析したことを論述する
課題について、構想を立て実践し、評価・改善する
例)理科の調査研究において、仮説を立てて、実験・観察を行い、その結果を整理し、考察し、まとめ、表現したり改善したりする
例)芸術表現やものづくり等において、構想を練り、創作活動を行い、その結果を評価し、工夫・改善する
互いの考えを伝え合い、自らの考えや集団の考えを発展させる
例)予想や仮説の検証方法を考察する場面で、予想や仮説と検証方法を討論しながら考えを深めあう
例)将来の予測に関する問題などにおいて、問答やディベートの形式を用いて議論を深め、より高次の解決策に至る経験をさせる
などがあげられています。
理解度CHCK!
「情報活用の実践力」を育成するということは、最終的にどのような力をつけさせるということでしょうか?
情報活用能力育成モデルカリキュラム
情報教育の目的や重要性は、よくわかったが、具体的にどのような目標を、どの学年で身に着けさせればいいのかわからない。という声がよく聞かれます。このような疑問に答えるのが、「情報活用能力育成モデルカリキュラム」です。上図の「情報教育の実践と評価のためのポータルサイト」から閲覧できます。
情報教育の目標は広範囲で長期的なので、3つの柱に対応し、小学校、中学校、高校までに分けて、
A.情報活用の実践力
1.コンピュータ・周辺機器の基本操作
2.情報の収集と加工
3.情報の分析
4.情報の発信
5.問題解決
B.情報の科学的な理解
1.人間の情報処理特性と情報のディジタル化
2.コンピュータの仕組み
3.情報ネットワークとセキュリティ技術
4.情報処理の方法と手順
C.情報社会に参画する態度
1.情報・メディアに対する態度
2.情報システムと社会
3.情報社会における規範
とカリキュラム全貌が大項目、中項目、小項目に分類されて示されています。
この表を詳しくみると、小学校では「情報活用の実践力」特に問題解決能力に向かっての項目が重視されているとともに、「情報社会に参画する態度」の情報・メディアに対する態度の育成が求められています。
また、このカリキュラム表では、教科を超えて身につけるべき(体験すべき)学習内容や学習活動が、具体的に表示できるようになっているのも特徴です。具体的な学習目標や学習項目をみると、低学年から、体験、認識、知識理解、技能、思考判断、態度形成のように、1回の授業で知識や技術を取得するのではなく、日にちの学習活動の中で繰り返しながらだんだん身につけていくべきタイプの目標であることがわかります。
さらに、これらの学習項目をクリックすると、どんな具体的な授業として展開できるか(またされてきたか)を検索できるようになっています(上図左側参照)。それらを参照すると具体的なイメージがわかるでしょう。
また、表全体を、時間をかけてじっくり眺めてみると、情報教育の全体像(小学校では何を大切にし、中高につなげているのか)がみえてくるのではないでしょうか。
重要なのは教師の役割
ここで重要なことは、情報活用の能力は、教師が教え込めることではなく、児童生徒が自ら、情報を必要とし、発信しなければならない環境を作り出し、具体的な場面で、的確な指示や支援をしてあげることです。
これは、例えば、水泳など実技(体育能力)の指導と通じるところがあります。いくら先生が見本の泳ぎを披露したり選手の映像をみせたり方法を解説しても、児童生徒は泳げるようにはなりません。実際にプールに飛び込み自分の手足を動かすことが必要です。しかしいくらたくさん時間をかけても、ただ泳いでいるだけではうまく泳げるようにはなりません。その時、適切な指導やアドバイスをすることにより、児童生徒の「ナルホド!」や、上達の実感が生まれます。それがさらなる意欲と努力につながり、上達していくのです。
情報活用の能力の育成には、実際に情報を活用しなければならない課題に児童生徒が取り組む時間が必要であり、その時の適切な教師の指導(アドバイス・支援)が重要なのです。
児童生徒が課題に取り組む時、次の3点が大切なポイントになってきます。
1)課題が、子どもたちに興味が持て、継続して追求できる課題であること。
答えが決まっている課題であると、どこかから答えがでてくると問題が解決してしまいます。課題は子どもたちからみて、いろいろな角度から取り組め、調べれば調べるほど、奥深い知識につながっていくものがいいと思います。特に社会科の課題などは、歴史、地理、文化、産業の発展など、あらゆる状況と関連し、しかも小学生では、本質的なところまではたどり着けない(しかし、あとの学習につながる)という意味で、いい課題がいっぱいあるように思います。
2)試行錯誤に十分な時間が取れること
子どもたちの考えは、様々なことに広がりますが、教師の願いや、教科の内容につながっていかない場合もあります。そこは、教師がうまく誘導して、まとまりの方向にむけてあげる必要があります。この時、決して、答えを教師が教えてはいけません。結果の矛盾や論理の矛盾をついて、もういちど考え直すように仕向けることが重要です。クラスの中には、期待される答えや教師の意図に敏感である子どももいて、すぐに結論を出してしまう子もいるでしょうが、ここでは「情報に基づいてみんなで考えること」が重要なので、十分な時間を確保することが、必要になります。間違っていても考えるだけ考えた結果、知った事実は、いつまでも記憶に残ります。
3)問題解決に情報やメディアが役に立つ課題であること
課題が出ても、どこかに答えが書いてある課題では、そこにたどり着く速さを競っているだけになります。答えらしきものがあっても、答えが2つ以上かかれており、互いに矛盾しているように見える答えに行きつくと、考える意味が出てきます。最近は百科事典が電子的にアクセスできますし、インターネットにアクセスすると多すぎるぐらいの解答を得ることができるでしょう。したがってまず情報を得る手段を使いこなすだけでも、いい練習になります。ただ、重要なのはその情報の信ぴょう性や論理性を検討する場面です。最近の子供たちは、ネットにアクセスし、はじめに見つけた情報だけで結論をだし、行動する傾向にあるといわれています。本や実験データ、多様な意見など様々な情報を収集すること、根拠となるような情報を写真や映像で記録すること、そこから得られた結論を、わかりやすく説明することなどに、メディアを活用できるような課題を設定すると、情報と情報機器の両方を活用できる子どもに成長していくことになるでしょう。
確認CHECK!
情報活用能力の育成において、何が最も重要だと思いますか?
あなたの考えに一番近いものを1つ選んでみましょう。